弥生時代の農業生産を画期的に高めたのは、鉄製農具の普及です。スキやクワに鉄が使われるようになったことにより、土を耕すことが容易になり(ある研究成果では木製農具に比べ作業効率が約4倍に伸びたと算定しています)、新しい土地を田や畑として切り開く開墾も盛んになったと考えられます。鉄製農具が普及するようになった中期後半以降の集落の急激な増加がそれを裏付けていると言えるでしょう。鉄製農具は農業の生産性を左右する重要なものでしたが、鉄素材は朝鮮半島から得なければならず非常に貴重なものでした。
吉野ヶ里遺跡は全国の弥生時代遺跡のなかでも鉄製品が多く出土し、スキ・クワの鉄製刃先や鉄鎌など鉄製農具も豊富であったことがわかっています。このような「鉄」の豊かさは弥生時代の吉野ヶ里が大きな力を持つ集落であったことを示していると考えられます。