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発掘について

遺跡の保存

保存盛土の図

吉野ヶ里歴史公園では大切な遺跡を守るため、遺構面の上に30cm以上の保存盛土をし、さらに整備に必要な盛土をその上に行っています。こうして大切な遺構を壊さずに、当時あった場所の真上に復元することができるのです。

復元について

吉野ヶ里歴史公園は、我が国の文化を象徴する国の特別史跡「吉野ヶ里遺跡」の保存と活用を図るために整備された公園です。復元整備にあたっては、考古学の分野だけではなく、関連する様々な学問や研究の成果が集められています。

復元について

建物等復元について

遺跡の復元は、発掘調査から見つかった建物跡からだけではできません。集落が保存する時代が日本の歴史の中でどのような時代だったのか、その時代の中で、集落は、どのような様子だったのか、こうした意味を考えた上で、建物一つ一つの存在価値や理由、目的を考え、最後にそれぞれの形や構造などを考えていくことが必要です。そのため、吉野ヶ里では必要と思われる各種の調査を行い、調査結果を踏まえた基礎設計をとりまとめ復元しています。

発掘現場

現在も吉野ヶ里歴史公園区域内の北側では、佐賀県文化課文化財保護室によって発掘が行われています。
現在は出土品の検証作業のため、発掘作業は休止しています。

遺跡の保存方法

当公園における、遺構面の保護と復元整備の概要は次のとおりです。

1.遺構の発掘 遺構は専門家によって詳しく調査されます。    
 
2.弥生時代の吉野ヶ里の集落の検討 集められた情報を古代建築や考古学の専門家が検討して弥生時代の吉野ヶ里の集落、建物、人々の様子を推測します。   遺跡の保存 調査の済んだ遺構は、再び土で埋め戻され、保存されます。
 
3.具体的な復元案 現代の技術を駆使したり、当時使われたと考えられる手法を用いる具体的な復元案を作成します。 4.弥生時代の吉野ヶ里の復元 盛土で保護された遺跡の上に弥生時代の集落が蘇ります。

保存盛土

  • 遺構面が傷つかないよう、確認された遺構面より30㎝以上の保存盛土をおこなう。
  • 竪穴建物や堀立建物は、遺構面より30㎝以上盛土した上に柱を建てて復元する。
  • 環壕は、環壕遺構の底部より50㎝以上盛土した上に往時の深さ、幅で復元する。
  • 地下埋没物については、遺構面より30㎝以上盛土した上に設置する。

盛土以外の遺構保存

発掘再現地区では、遺構面を型どりした後、保存のために埋め戻し、その上に型どりレプリカを設置します。

1.基礎調査の実施

国営吉野ヶ里歴史公園の「環壕集落ゾーン」は、弥生時代の大規模な環壕集落の様子を体験・体感できる環境づくりを行うこととして計画されました。
このため、環壕集落ゾーン内の建物等(竪穴建物、高床倉庫、物見櫓、環壕、柵、工房等)を、綿密に検討された学術的考証に基づいて復元し、往時の雰囲気を醸し出せるものとしていくため、復元設計の基礎となるべき資料の収集・整理と設計の前提となるべき条件分析を行うことを目的として、2箇年にわたって、学識経験者等からなる委員会を設置し、建物等復元にかかる基礎調査を行いました。この調査報告書は以下項目の構成によりまとめられ、その後の復元建物の基本設計・実施設計を行うための基礎資料となっています。

1-1集落調査

吉野ヶ里の集落が存在した時代(弥生時代)がどのような社会だったのかを調べるための調査です。

1.主要集落遺跡アンケート調査

全国の主要な縄文・弥生・古墳時代の遺跡について、遺跡の時期や立地、集落の全体の様子などの調査を行いました。

2.海外事例調査

弥生時代の吉野ヶ里に影響を与えたと考えられる中国や韓国の集落遺跡、途上遺跡についての調査を行いました。また、当時の人々の社会観や世界観と集落のつくりの関係など、遺跡に残りにくい情報を得るため、現在の民族事例についても調査しました。

3. 日本列島における集落の流れ

上記の調査から得られた資料を基に、日本全国における集落形成の流れをまとめ、各時代の特色を明らかにしました。

4. 吉野ヶ里集落のあり方の検討

全国の集落調査を基に吉野ヶ里遺跡の発掘調査資料を加え、吉野ヶ里集落の様子を導きました。

2.復元建物等の基本設計、実施計画の検討

基礎調査を踏まえ、「建物等復元基本設計委員会」を立ち上げ、基本設計をとりまとめました。
さらに、学術的な調査研究に基づく復元と、実際に来園者に体験・体感してもらうための建物の利用想定、雰囲気を盛り上げるための展示も含め、実施設計として取りまとめました。建築にかかる設計にあたっては、現行の建築関連法規等の制約、さらに、建築資材の調達等といった課題があり、制約条件等を明確に示し、制約条件のもとに、実施設計の検討が進められました。
また、復元整備にあたって課題となる材料の調達面については、建築材料の市場性について調査を行っています。

建物復元に関する考え方(概略)

建物の復元手段1

建物の復元手段2

   
建物の復元手段3 建物の復元手段4
   
建物の復元手段5 建物の復元手段6

2-1建物等調査

個々の建物を復元するために、全国の縄文~古墳時代の遺跡で見つかった建物遺構や当時の人々が残した絵などの資料の調査、当時の建築技術に関する調査や建築のための道具の調査、さらに建築以外の関連する施設などの調査を行いました。

1.大型掘立柱建物遺構出土調査

弥生時代に本当に大型の建物があったのか、それを確かめるための調査を行いました。全国から、床面積100平方メートルを超える大型の建物跡がたくさん見つかっていることが分かり、この調査のまとめは、弥生時代にも大きな建物があったことを裏付けるとても貴重な資料となっています。

柱材
▲大阪府和泉市池上曽根遺跡出土の
大型建物の柱材

2. 絵画、家形埴輪、家屋文鏡等調査

当時の建物は一つも残っていないため、建物の形を調べることはとても難しいことです。ただ、当時の人々が使っていた土器に建物の形が描かれているもの(絵画土器)や、粘土で作った建物の模型(家形埴輪)、青銅の鏡の模様に表現されているもの(家屋文鏡)などがたくさん残っており、これらは建物の形を考える上でとても重要な資料となっています。

土器
▲鳥取県米子市の稲吉角田遺跡出土の建物が描かれた土器
土器2
▲唐古・鍵遺跡(奈良県)の建物が描かれている土器

3. 民族事例調査

世界各地には、今でも昔とほぼ変わらない生活をしている「少数民族」と呼ばれる人たちがたくさん住んでいます。こうした人々の建物を調べることによって、昔の建物の考え方を推測していくことができます。時代を超えて大きなヒントを与えてくれるとても貴重な資料です。

4. 建築部材調査

日本各地の遺跡から、建物等に使った柱や板などの木製品がたくさん見つかっています。
こうした木製品を調べることにより、当時どんな道具を使って、どんな方法で作っていたか、ということが分かってきます。また、材料に使われている木の種類を調べることにより、当時どのような植物が生えていたか、という調査にも大変役に立つ資料です。

丸木船
▲北区飛鳥山博物館所蔵の
丸木舟

5. 工具調査

建物を作るためには、道具が必要です。日本全国から、斧(切りたおす)、ヤリガンナ(削り取るなど)、刀子(小刀)など建築に必要な道具がたくさん見つかっており、当時の技術を調べるためのとても貴重な資料です。

6. 関連施設

建物だけでなく、環壕、土塁や柵列、水田などを作る技術も、建物を作る技術と大きく関係しています。こうした様々な施設を調べることにより、道具や材料、作り方などを推測していくことができます。建物と直接には関係なくても、たくさんヒントを与えてくれる貴重な資料です。

井堰
▲福岡県板付遺跡出土の井堰